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京都地方裁判所 昭和33年(む)22号 判決

請求人 京阪コンクリート株式会社

代表者 荒川鹿次郎

決  定

(請求人・代理人氏名略)

右請求人より別紙目録第一乃至第三記載物件に対し検察官のなした押収の取消又は変更の請求があつたので当裁判所は事実取調のうえ次の通り決定する。

主文

昭和三三年二月一三日京都地方検察庁検察事務官太田建一が京都市伏見区淀本町二二五番地京阪コンクリート工業株式会社でなした別紙目録第一記載の物件に対する差押はこれを取消す。

その余の本件請求は棄却する。

理由

本件請求の請求の要旨は

請求人は荒川鹿次郎がその代表取締役社長である株式会社であるが、右荒川が請求人会社の常務取締役辻彌太郎、同会社員若部初郎と共謀のうえ昭和三一年一〇月二五日頃京都府周山土木工営所長首藤了に対し、その職務に関し、金五万円を供与し贈賄したとの被疑事件につき京都地方検察庁検察官の捜索を受け、別紙目録第一乃至第三記載の物件及びその他の物件を差押えられたが、右各目録記載物件はいずれも右被疑事実と関連性がないから同物件に対する前記差押は違法であるからこれが取消を求める仮に関連性があるとしても右物件は同犯罪事実の証明に直接必要なものでないことは明かであるのに反し、請求人にとつては日常の業務遂行上備付を必要とする緊急の物件であり、殊にその一部は営業資金の操作、売掛代金の請求、経営秩序の保持上一日もこれを手離し難いものであるから、請求人はそれらの物件が引続き押収されていることに不服であり、因つてこれが還付又は仮還付を命じ、必要あるときは請求人に保管を命ずるよう押収の変更をする決定を請求する。

というにある。

よつて案ずるに、本件記録並に事実取調の結果及び本件捜索差押許可状請求書、同捜索差押許可状、同捜索差押調書によれば、昭和三三年二月一二日、京都地方検察庁検察官森脇郁美は被疑者荒川鹿次郎につき、同人はコンクリート製品の製造販売並に土建業を営む請求人会社の社長であるが、同会社常務取締役辻弥太郎、同会社員若部初郎等と共謀のうえ昭和三一年一〇月二五日頃京都府北桑田郡京北町京都府周山土木工営所において右周山土木工営所長として同工営所が施行する府営工事の執行監督等の事務を鞅掌している首藤了に対し同工営所管内において施行する府営工事の指名入札請負並にコンクリートブロツクの納入等の指名、契約、検査、代金支払等につき従来便宜な取扱を受けたことの謝札並に将来も受けたき趣旨のもとに現金五万円を供与し以て右首藤の職務に関して贈賄したものである。との被疑事実につき、請求人会社事務所及び附属建物を捜索し右贈賄事実を立証する書類、メモ、手帳、日記、帳簿、簿冊、往復文書、預金通帳の差押許可状を京都地方裁判所に請求し同日同裁判所裁判官石山豊太郎より右許可状の発布を受け、同月一三日京都地方検察庁検察事務官太田建一が右許可状に基きこれを立会人請求人会社総務課長久保田正太郎に示し請求人会社事務所及び附属建物を捜索し、別紙目録第一及び第二記載の各物件及びその他の物件を差押えたこと、右差押物件のうち別紙目録第一記載の各物件は右被疑事実と関連性がないこと、別紙目録第二記載の各物件は右被疑事実中の現金五万円の授受には直接関連性はないが、右金員授受の趣旨に関し請求人と周山土木工営所との取引関係、その請負契約の適否等につき関連性があるが、現在なお同物件に対し押収を継続する必要がないこと、京都地方検察庁検察官河田日出男は昭和三三年三月三一日請求人に別紙目録第一及び第二記載の各物件を仮還付したことが各認められる、してみると別紙目録第一記載の各物件に対する差押は違法であるからこれを取消すか、別紙目録第二記載の各物件に対する差押は適法であり且つ請求人がすでに右物件の仮還付を受けている現在では右物件に対する請求人の本件請求は理由がないからこれを棄却する、更に別紙目録第三記載の物件についてはその押収番号に該当して押収目録表示の数量の各簿冊は押収されて存在するが、右各簿冊のうちに請求人の請求する各簿冊は存在しないから、これら物件に対する請求人の本件請求も理由ないものとして棄却する。

よつて刑事訴訟法第四三二条第四二六条により主文の通り決定する。

(別紙目録)(略)

(裁判官 北後陽三)

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